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何事にも原点や始まりがあるのが世の人の常。聞くところによると旅にもそれがあるらしく『お伊勢参り』なるものが、ニッポンの旅の原点になるらしい。となれば、バイクで旅するライダーたるもの、お伊勢さんを素通りするのも芸がない。アマテラスの鎮座から2000年。今も神々の聖地として人々を魅了し続ける伊勢の地をホンダ・CRF250ラリーとともに駆け抜ける。
写真・キャプション=武田大祐:タンデムスタイル創刊から本誌を撮影。正統派ツーリング企画からタンスタ特有の変わり種企画で 歴代編集長のあられもない姿を撮影し続けてきたカメラマン
ライダー・文=谷田貝洋暁:約10年間にわたりタンデムスタイルを作り続けた元名物編集長。現在はそのノウハウと人脈を活かし、フリーランスとして活躍している
※本記事は2019年4月24日発行タンデムスタイルの企画をベースにしています
今回のツーリングスポットはこちら
- 伊勢湾フェリー(伊良湖営業所)
- 伊勢神宮〜外宮〜
- 伊勢神宮〜内宮〜
- おはらい町
- 倭姫宮
- 剣峠
- パールロード
- 牡蠣
- 相差魚港
- 海辺の宿うえじ
- 石神さん(神明神社)
- 伊勢志摩スカイライン
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平成最後の『お伊勢参り』に出発だ
2019年4月1日、平成に代わる新しい元号が『令和』と発表された。どうやら248番目の元号で、5月1日をもって正式に切り替わるのだという。昭和生まれの僕は、これで人生二度目の改元。思えば平成も、昭和ほどではないにせよ、30年続いた立派な元号。しかも、今回は崩御ではない改元である。しょっぱなから、お堅く始めてしまったのはワケがある。というのも企画担当の武田カメラマンから「次のツーリング企画だけど、お伊勢参りに行かない? 平成最後のお伊勢参りって感じでさぁ?」。なんていわれて「どうせなら伊良湖からフェリーで伊勢入りするのはどうですか?」などと、ホイホイ乗ってしまったのだが『平成最後のお伊勢参り』という意味を実に軽〜く考えていたことに旅立てから気づくことになったのだ。
季節は、まだ新元号の令和の『レ』の字も発表されてない3月の中旬。思えば伊良湖岬のある渥美半島を走っていたときには改元のことなどまったく頭になかった。伊良湖に来るのは10年ぶり、あるいはそれ以上か? 渥美半島はもっとま平らなイメージがあったのだが、どうやら思い違いであったことに気づく。伊良湖岬の突端付近は短いながらもワインディングがあり、潮風を浴びながらクルージングできる道があることを知った。ただ、フェリー乗船のあわただしさは10年経っても変わらない。港で次の船の出航が数十分後であることを知り、そそくさとチケットを購入。旅情もなにも感じるヒマもなく、急かされるように船内へとCRF250ラリーを押し込む。伊勢湾フェリーに限らず、大抵のフェリーは他の車両よりも先にバイクを固定するもんだ。出航を遅らせたくない船員から、とにかく急がされるのがバイクでのフェリー乗船というワケだ。
なんだかんだとあわてたものの、乗ってしまえば旅情が出るのが船旅である。50分ほどの短い航路とはいえ、甲板に出て潮風を浴びていると、気持ちが自然と伊勢に向いてくる。お伊勢参りといえば、江戸時代の旅の定番中の定番。『東海道中膝栗毛』で弥次さん喜多さんが目指したのも伊勢神宮だし『一生に一度はお伊勢参りに行ってみたい』というのが、江戸庶民の願望だったらしい。当時は、飛行機どころかバイクもなく、旅といえば主に徒歩である。当然、江戸から伊勢参りに行くにしたって、現代のように2泊3日で『ちょっくら行ってくる』とはいかない時代だ。なぜそこまでして人々は伊勢を目指したのか? 以前から疑問に思ってはいるものの、どうにも納得のいく理由を見つけられずにいる。今の時代、ググれば『東海道中膝栗毛が大流行したから』なんて理由が安易に出てくるものの、どうにも現代でいう『聖地巡礼』のために何十日も歩いて、しかも大金を使って旅をするとは思えないのだ。
伊勢湾フェリーといえばもう一つ。いつだか存亡の危機に瀕したという話を聞いた。買い物ついでに売店の売り子さんにそれとなく水を向けてみると「一時期は、廃止の話もあったけど、住民の署名活動で存続が決まったんですよ」と明るく答えてくれる。周りを見れば満員とは言い難いが、それなりに客は乗っている。フェリーに限らず、長らく続いたものが『もうからないから』とやめてしまうことは簡単だ。ただやめてしまったら、もうそこで積み上げてきたすべての技術が途絶えてしまう。それが人々の意思で存続することができた。人ごとながらうれしく思う。そんなこんなで、時間を潰しているうちに、下船を知らせるアナウンスが聞こえてきた。ディーゼル機関特有の油臭ただよう車両甲板に降りると、カワサキのZZR乗りが荷造りをしていた。「どこまでですか? あんまり天気がよくないんですよねぇ…」なんて話しかけてみると、やはり向こうも天気が気になるらしく「南紀まで行こうと思ったんですけど、迷ってまして…」なんて返事。「では、よい旅を!」。そう言い交わし、船を降りれば、別々の方向に旅立っていく。こんな一期一会があるのもバイク旅ならではのことだろう。さぁ、いよいよ三重県に上陸だ。
伊勢湾フェリー(伊良湖営業所)

せっかくなので伊勢湾を越えてのお伊勢参りだ。伊勢湾岸道路ができる前はちょくちょく利用していた伊勢湾フェリーに伊良湖から久々に乗り込む。やはり、船旅というのは旅情をそそるな〜

アドべンチャーツアラーCRF250ラリーが今回の相棒だ。オン&オフをこなす頼もしい相棒は、どこにでも行ける安心感が最高だ
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外宮→内宮→おはらい町が正式な参拝方法らしい
なにはともあれ伊勢神宮である。確かいくつかの社があって、参拝の仕方も順番もあったような? ふと立ち寄ったコンビニで伊勢神宮関連の本をペラペラとめくっていると、実にややこしいテーマに手を出していることに気付いてしまった。というのも、序文に『伊勢神宮は天皇家のご先祖さまを祀った神社である』なんてことが書かれていたからだ。伊勢神宮の祭神が天照大神、お天道さまを司る神さまなのは知っている。でもね、正直、僕の中で神話の世界と現実世界はリンクしてはいない。聞けば、年始に安倍総理が、元号の変更について報告の参拝を行ない『新元号は4月1日に発表します』なんていう報告会を行なったのも年始の伊勢神宮参拝直後。この改元のタイミングでお伊勢参りとは、実に危ういカードを手にしてしまっていることに、今更ながら気が付いたというワケだ。
さすがの僕も。伊勢神宮がに数十年に一度、隣の土地にまったく同じ社立てて、神さまを引っ越す『遷宮』を行なう神社だ、…なんてことは知っている。ただノンポリティカルであり、右も左もわからない僕は、正直そこらへんの事象にたいへんうとい。今回のお伊勢参りにしたって、正直、天橋立やビーナスラインを走りに行くのと同じくらいの意義しか感じていなかったのだ。現に今も、難しい漢字が並んだ解説本よりも、ピンク色のコーナーにある『ようこそ変態王国ニッポン!』のタイトルの方が気になっているくらいだ。そんなこんなでコンビニの雑誌コーナーで知り得た付け焼き刃情報によれば、外宮、内宮の順でお参りをして、最後におはらい町で食事をするというのが、由緒正しき伊勢神宮詣での作法らしい。僕は伊勢神宮とはなにかをちゃんと知るべく、正式なお参りに加えて、伊勢神宮の資料館である神宮徴古館にも立ち寄ってみることにした。ちいとばかし、フンドシを締めてかからにゃいけませんなぁ…。誰に言うでもなく、CRF250ラリーにまたがった。
伊勢神宮〜外宮〜

『伊勢神宮』参拝の作法にのっとりまずは外宮から参拝。海上自衛隊の新入隊組も参拝していた
伊勢神宮〜内宮〜

続いて内宮へ。こちらも雨の中であったが、大勢の参拝客が訪れていた
おはらい町



さて、作法にのっとり参拝を終えたら『おはらい町』で腹ごしらえ。まずは、カツオを使った『てこね寿司』で舌を楽しませ『伊勢うどん』で腹を満たしたらデザートは『赤福餅』 で…。あと残すは牡蠣ですな。まあ、しきたりですからね
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伊勢神宮の存在意義は文化の保存と継承にある
神宮徴古館。行ってみれば実に興味深い場所だった。展示内容は伊勢神宮で行なわれる遷宮をはじめとした儀式や、その作法などを紹介している施設なのだが、展示を俯瞰してみてみると伊勢神宮という施設の第一の存在意義は『あらゆる産業技術の保存と継承』にあることに気づかされる。20年ごとに社を建て替える式年遷宮はもちろんのこと。外宮では毎朝『一番原始的な火起こし器』と聞いて誰もが思い浮かべるあの器具で、毎朝ゴリゴリと火を起こし、米を炊く。これを『神さまへの貢物』という名目のもと、2000年続けているというのである。もちろんそこで炊かれる米もお手製。神宮の敷地には田んぼや畑もあり、小規模ながらも、苗作りから田植え、収穫といった米作りの技術の保存継承が行なわれている。つまり火起こしや米作り、建築といったあらゆる分野の知識が資料ではなく、生きた状態で保存する。これこそが、宗教以外の伊勢神宮の存在意義というわけだ。
今の時代も後継者問題に悩む伝統技術は多いと聞くが、どれだけ長い歳月をかけて高めた技術であっても廃れるのは一瞬である。伊勢湾フェリーの話じゃないが、やめてしまえばそれまでつちかってきた経験はすべて失われる。取り戻すには膨大な労力を要するロストテクノロジーとなるのだ。伊勢神宮ができたのは今から約2000年前のことだとか。神話によれば、アマテラスの使いであるヤマトヒメが、アマテラスがお祀りするのに一番ふさわしい場所を数十年かけて探し出したのが、この伊勢の土地だったらしい。数十名で編成されたヤマトヒメの一行は、出雲を出立後、いろいろなところで稲作を広めながら歩いたというから、あらゆる文化の継承が安定して行なえる気候や風土を求めて歩き回っていたとするなら、合点もいく。
それにしても、そんな昔から人々が積み上げた知識や文化が失われることを恐れ、その保全に務めたということ自体が驚きである。昔と違い、今は火を起こすのもライターやマッチがあれば一瞬である。でもね、そのライターやマッチがなくなったらどうなる?
ご安心あれ、そんな時代が来ても伊勢神宮には、2000年前の最先端だった火の起こしの技術が継承され、我々はお米のご飯を食べられるということなのだ。ぜひとも、我らがバイクもその保存・継承技術の一つに加えてもらいたいもんだと思いながらCRF250ラリーを走らせる。パソコンの前では手に入らない、実地で得た知識を得ることは楽しいもんだ。
倭姫宮

天照大神(アマテラスオオミカミ)のお告げにしたがい、この地に天照大神の御霊を祀ることにしたのが、倭姫(ヤマトヒメ)だ。その姫君が眠る『倭姫宮』は内宮と外宮の中間に位置している
剣峠

内宮から県道12号を南へ走ると『剣峠』へとたどり着く。内宮を流れる五十鈴川の源流部で、神宮宮域林でもある一帯は、山深く幻想的で神秘的な雰囲気が漂っている
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楽しい道さえあればバイク乗りは幸せなのだ
小難しいことを考えていたら、とにかく無心で走りたくなった。幸い、この伊勢の裏山には、パールロードに伊勢志摩スカイラインと、名だたるワインディングが2本もそろう。まずはリアス式海岸のクネクネの海岸線がそのままワインディングになったパールロードへCRF250ラリーのハンドルを切る。
しかも、今回相棒に選んだCRF250ラリーはワインディングが楽しいローダウン仕様。右へ左へと続くコーナーを紡いで走るのが楽しくてしょうがない。そしてこの道を走るたびに思うのは、カーブと道幅の絶妙なバランス加減だ。変に飛ばさなくても右へ左へバイクを操る感覚が楽しめ、適度なアップダウンもあるからあきることがない。そしてなにより全線にわたって空が広い。残念なのは、せっかくすぐ側に海があるのにそれほど展望が開ける場所があまりないことだろうか? これには、この土地特有の隆起海食台地という地質が関係している。平らで遠浅だった海底が何度も隆起と沈降を繰り返したために、標高が平らにそろいながらも海岸線は入り組んだ地形が…って、もう誰も聞いてませんね。この話は別機会にすることとしよう。とにかく伊勢志摩のワインディングはバイクを走らせるのにちょうどいいってことだ。
パールロード


鳥羽と志摩をつなぐ『パールロード』は、かつては有料道路だったが、現在は無料で楽しめる。信号もなく日本屈指のツーリングロードは爽快そのもの。ほどよいコーナーが次々に登場し、ときどき海の風景が目に飛び込んでくる。心ゆくまでリアス式海岸のワイデイングを楽しめるぞ
牡蠣

パールロードのもうひとつの魅力が『牡蠣』。食い放題もあったが、この旅はつねにお腹が満腹気味だったので10個でやめときました
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ようやっとアマテラスさんが微笑んでくれた
「明日、5時起きで晴れそうだったら朝日をねらおう」。春霞と春雨で、あまり天候に恵まれたとは言い難い状況に武田カメラマンがついに殿下の宝刀を抜いた。逆光カメラマンと別名がつくほど、朝日と夕日にこだわるこのカメラマン。こちらもそろそろ本気を出すころ合いだろうと踏んでいた。まぁ、朝日だから当然早起き。少々面倒ではあるのだが、アマテラスさんを祀る伊勢神宮に参拝しておいて、朝日の一つも拝まないのは申し訳ないというものだ。それに付け焼き刃のメッキ処理とはいえ、ちっとは襟を正してお伊勢参りをしたつもりである。ちょっとくらいお天道さまがいい顔してくれたっていいころだろう。
朝日をねらうために陣取った場所は、鳥羽の東の突端に近い相差(おうさつ)の民宿。海女さんで有名な集落で、石神さんのいる神明神社があるところといえば知っている方もいるかもしれない。以前一度来たことがあるが、昔ながらの道幅の狭い漁師町なのに、どこか活気のある雰囲気に一度泊まってみたいと思っていた集落だ。お世話になることになった『海辺の宿うえじ』も、御多分にもれず漁師宿。おかみさんのお母さんはつい最近まで現役の海女さんだったという宿の飯は それはそれはうまかった。今の旬はワカメとのことだったが、採ったばかりというワカメが、なんだかそれだけでうまいのである。今は姉妹で民宿を切り盛りしているそうだが、人懐っこい性格はこの土地独自にものだろうか? 今の時代はともかく、女性が一人で生計を立てるのが難しかった時代から、この地域の海女さんは経済的に自立。だからこの辺りの女性は明るくサバサバしているのだとか。立ち話ついでに『女性の願いをなんでも一つかなえてくれる』スピリチュアルスポットとして流行っている石神さんついて聞いてみれば、「こんなに人が来るようになるとは思ってもみなかった。毎朝の犬の散歩コースだったんだけど、観光客が増えたら『犬猫の獣の類の侵入を禁ず』なんて、看板できちゃってうちの犬は迷惑してるのよ」なんて笑うのだ。
朝日は相差港に出てみれば、ごらんのとおり。ようやっとアマテラスさんが微笑んでくれたというわけだ。しかし、久々に拝んだ朝日はなんだかやっぱり荘厳に見えるから不思議なもんだ。これが雲で見えようが見えまいが毎朝欠かさず水平線から上がってくるのだと考えると、崇めたくなる気持ちもわかる。そしてそのごく普通の日常が永遠に続いて欲しいと願いたくなるのもまた自然なことなのだ。
相差魚港

アマテラスの地に朝陽が昇る。なるほど、太陽神でもあるアマテラスの大地で見る朝陽は一層神々しいのであった
海辺の宿うえじ

古くから海女で有名な相差(おうさつ)にある『海辺の宿うえじ』に泊まれば、これまたおいしい海の幸がテンコ盛り。ここのおばあちゃんも海女さんだったそうだ
石神さん(神明神社)


最近特に有名になった相差の『石神さん(神明神社)』。神社前は多くの女性の参拝者が行き交うのだ。ほんの十数年前は観光客はほとんどいなかったのだが…。女性の願いをひとつだけ叶えてくれるというが、男だけど念のため参拝してみました

伊勢の山深さを物語る山並みと豊潤な海。この地を旅してみると、天照大神が倭姫に「伊勢の国は常世の国、田舎だがうまし国だから、ここがいい」と告げたというのもわかる気がするのだった

海女は海に潜るときにこのような形をした石をオモリにしたという。描かれている星(セーマン)と格子(ドーマン)は魔除けや厄除けの意味があり、海女は必ず身につけて潜るそうだ
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バイクがあればお伊勢参りは何度でも
アマテラスさんの加護のもと絶好のツーリング日和に恵まれた最終日。この晴れ間をどう活かすか。出発を前にツーリングマップルを広げてしばし思案。伊勢志摩サミットで一躍有名になった賢島のあるあたりまで足を伸ばすことも考えたが、今回はもう一度パールロードを堪能して、そこから今度は、もう一つの観光道路である伊勢志摩スカイラインに足を伸ばすことにした。やはり伊勢に来ておいて、この二つの道路は外すことができない場所だろう。しかも、高低差の少ないパールロードとは違い、こちらは尾根に向かってぐんぐんと標高を稼ぐ山岳スカイライン。同じ地域で趣の違う二つのワインディングを楽しめるというのだから、走っておかない手はない。
しかもこの伊勢志摩スカイラインには、インスタグラムで人気の伊勢湾をバックに愛車の写真が撮れるスポットがある。せっかくだからと僕らも撮影をしていると、東京から九州にある実家を目指すという若者がスズキの250㏄でやってきた。聞けば大学の春休みを利用して九州までオール下道&キャンプで気ままな旅をするという。「今日は紀伊半島の南端の潮岬まで行きたいんです」などと語る若さあふれる行動力がなんともうらやましく思える。老婆心から「この時間からだと下道で潮岬に行くのは難しんじゃないかなぁ? 行けて熊野古道あたりじゃないの?」なんて話をしてしまったが、いらぬアドバイスをしてしまったと、後になって後悔している自分がいた。世の中で一番自由な乗り物であるバイクに乗っているのである。行けると思ったなら勢いにまかせて行ってみたらよかったのである。無謀だろうと、なんだろうと試してみることができるのが若さの特権。そこに大人の変に凝り固まった常識や価値観を押し付けてしまったようで、どうにもバツが悪い思いをしている。彼は今ごろどこを走っていることだろうか?
さて誌面も尽きてきた。『平成最後伊勢湾をバックに愛車の写真が撮れのお伊勢参り』なんていう、ややこしいテーマを拾ってしまいどうなることかと思ったが、これはこれで楽しい旅になったと思えるから不思議なもんだ。日本人の旅の原点とも言えるお伊勢参り。令和の世を迎えようとする現在は『一生に一度』なんて大それた看板をかかげなくても、バイクさえあれば、わりと気軽にやってこれる時代である。そういやなんで『日本人はお伊勢参りが好きなのか?』のその謎は今回も理解することができなかった。これだけ簡単に旅できてしまう世の中だから、本当のところは理解できないのかもしれない。そんなことも考える。ただこの土地へは、令和の世を迎えたところで、また再び訪れることになるだろう。この宿題は次の旅の理由のためにとっておこうか。僕はCRF250ラリーのアクセルを開けるのだった。
伊勢志摩スカイライン

鳥羽から伊勢をつなぐ伊勢志摩スカイライン(約16㎞)は有料だが、すこぶる風光明媚。SNSでは菅島をバックに撮るこのカットが流行ってるんだとか

伊勢志摩スカイラインで出会った学生さん。タンデムシートに大荷物を積んで野宿旅。これから西日本を回るそうだ。旅の原点の地で、若者旅の原点を見た思い
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