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南アルプスの懐から駿河湾の河口まで約168㎞を流れる大井川。その流れに沿うように下流から上流へとバイクを走らせる。 SL・つり橋・温泉・新緑の峡谷に秘境駅…。そんな光景の中で私が見付けたのは、人間たちに形を変えられながらも、人々の暮らしを支え、健気に海へとむかう川と水の姿だった。
写真=武田大祐:タンデムスタイル創刊から本誌を撮影。正統派ツーリング企画からタンスタ特有の変わり種企画で 歴代編集長のあられもない姿を撮影し続けてきたカメラマン
ライダー・文=福本優香:バイクに乗っていることが楽しくてしょうがないバイク女子。とくにヤマハのSRがお気に入りで、初のマイバイクもSRを購入したほど。空手歴10年の黒帯で、得意技は上段回し蹴りだとか。そんなわけで、好みのタイプは北斗の拳のケンシロウだそうです
※本記事は2019年7月24日発行タンデムスタイルの企画をベースにしています
今回のツーリングスポットはこちら
- 千頭駅
- 川根温泉笹間渡駅
- 川根物産(煎茶ソフトクリーム)
- 田野口津島神社(五本杉)
- 四季の里
- 夢の吊橋
- 天狗の落ちない石
- 奥大井湖上駅展望所
- 井川大仏
- 井川大橋
- たぶの家
- 滝浪商店
- 接岨峡温泉駅
- 尾盛駅
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時代の流れを越え走るSLの姿
いつしかの記憶でも、いつまでも心に残っている風景。あの日「またね」とつぶやいた私。ときが流れ、ふっとそのことを思い出したら、きっと、あの景色に逢いに行く最高のタイミングなんだ。今回は私がずっと忘れられなかった景色があり、そこを目的地にします! 私が行きたかった場所は『夢の吊り橋』と『奥大井湖上駅』。
大井川周辺を調べていくと、気になることがたくさん増え、あっちこっち行きたくなった。じゃあいっそのこと、大井川を下流から上流へ、遡上しながら全部この目で見てみようじゃないか! 大井川とは静岡のほぼ真ん中にある大きな一つの川。江戸時代には「越すに越されぬ大井川」と謳われるほど、天候に左右され、雨が降っては数日間の大洪水。何度も氾濫も繰り返し、簡単には渡渉させてくれない荒れに荒れた川だったそう。
現在では、上流部にいくつものダムが建設され、下流に水は流れてこなくなり、川はすっかり干からび、川原は白いジャリばかりで、その隙間を微量の水が流れてる。折れた木も転がり、水も灰色に濁っている。以前、私はこの川の殺風景な姿を見たとき、正直ガッカリした。しかし、それはかつて暴れ川と呼ばれたほどの川がこうなった理由を、私がまだ何も知らないだけだったのです。
今回の旅の友はホンダ・CB250R。CB250Rは当然知っているし、見たこともあるけど、触ったことはなく、乗ったこともない、2人でどこかへ出かけるなんて、まったく想像がつかない。そんな存在のバイクでした。だから、2人で出かけることになって、初めましてのとき、なんだか緊張した。「よろしくね」とちょっぴりよそよそしくCB250Rに触れて走り出す。私とCB250Rは国道473号を北上開始。
向かったのは名前のない踏切。ここは知る人ぞ知るスポットで、煙をモクモクに出したSLが目の前を通りすぎてくれるのです。CB250Rを安全な場所に停めて、あとはSLがやって来るのを待つだけ。ふう、いい天気。何気なく周りを見渡せば、錆びた線路のすぐ隣に小川が流れている。その小川には小さな橋、川沿いに適当に生えた雑草。新緑の山に囲まれ、その奥に広がる清く澄んだ空。この風景…、田舎のおじいちゃん家みたい。そのとき、ふとこんなことを思い出しました。私が幼きころ、夏の夜にホタルを2、3匹捕まえてきて、長ネギの空洞に入れると、ネギがホタルの光を宿しポワッと光輝くのです。まるで、天然物のペンライト。まぶしすぎず暗すぎず、本当にきれいだったなぁ。それを何本か作り、川沿いをみんなで歩きました。田舎ならではの、閉鎖的で幻想的な遊び。最後はちゃんとホタルを逃してあげるのがルール。これを、ネギ灯篭なんて呼ぶそうです。
あのころの記憶を懐かしんでいると、汽笛が鳴った! お、いよいよか。「ゴトトトトトトト……」と遠くからSLの音が聞こえてきて、視界に入ったときには想像していた十倍くらいの煙の量!? モックモクです。実際に、目の前を通りすぎるときには、その大迫力の力強さに、隣にいたCB250Rと腰を抜かしそうになっていました。このレールを走り続けるSLに向かって必死で手を振る私。それを見て乗客は窓から優雅に手を振り返してくれている。令和とは思えないレトロなやり取り。素敵だ。この後、千頭駅で停車中のSLに連結されていた旧型客車のなかを見学させていただきました。戦前からほぼ変わらない空間。木の床に木の壁、座席の青緑色のシートがとても気に入りました。私が今座っている席には、今までどのくらいの人が座ったんだろう? きっと、私なんかには想像もつかない数の人生を運んできたに違いない。ちなみに、停車中でも石炭を燃やし続けてボイラーを暖めておかないと、次の発車時にスムーズな始動ができないため、停まっていても常に煙突から煙がモクモクと出ています。暖気が必要なんて、昔のバイクと一緒だ。今なお現役で疾走するSLを見られて大満足の私はまた、だだっ広い大井川の遡上を再開したのでした。

生まれて初めて見る走るSL。しかもこんなに間近で。大迫力に大満足
千頭駅

『千頭駅』でこれまた初めてのSL見学。天井には扇風機。冬場は足元にある蒸気暖房。そして木製のイス。この車両は、これまでどれほどの人々を運んだのだろうか?
川根温泉笹間渡駅

昭和5年に開業して修復作業をして残っている『川根温泉笹間渡駅』。89年目にして、ついに令和突入。すごいや…
川根物産(煎茶ソフトクリーム)

千頭駅前の『川根物産』の煎茶ソフトクリーム。本当に川根茶が練りこまれているのでバッチリお茶の味! ごちそうさまでした
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さらに山の奥へ! 深い渓谷を駆け抜けていく
ここから先『鵜山の七曲り』とも称されるほどクネクネにうねった大井川を並走する。今は濁った水がチョロチョロと流れているだけの川になり、なんの変哲もなくボーっと見てられるけど、こんなにも湾曲した川の道に、激しい水流が流れてくると考えると恐ろしい。
鵜網という地域を走っているときに、思わず「わぁ… !?」の声と同時にバイクを止めた。一面鮮やかで、一切のムダがなく巧妙に整った茶畑に、なんて綺麗なんだろう!と感動した。お茶農家の方に製茶について聞いてみると「茶ってゆうのは繊細でね。新芽が芽吹くころに、少しでも茶の葉に霜をつけてしまったら、全部ダメになる。そうすると、おいしいお茶の葉が採れない。だから寒くなる夜には、扇風機を回して葉が凍らないように気をつかうんだ。扇風機がなかったころはろくに眠れなかったんだよ」。作り手の繊細な気づかいは間違いなくおいしいお茶にも映し出されている。そして、ここで出会う人みんな、「川根に来たら、お茶を飲んで行きなね。本当においしいから」と笑う。真心がこもった一杯のお茶を通して、ここでは人と人、そして人と街が深く繋がっている、そう確信しました。いただいたお茶は、とても深い愛情を感じる濃いものだった。
さて、縦にも横にも広い大井川。架かる吊橋は名前があるだけで30本ほどあるそう。その吊橋のなかでもっとも長いのが、塩郷の吊橋。案の定、橋はすごく揺れている。下をのぞくと、モノを落とすと一瞬で見失いそうな茶色く濁った川。対岸までは220m。目の前のゴールがずっと遠く感じる…。さぁ、行くよ! 後ろは振り向かずに、ワーッと駆け出す私。吊り橋はガチャガチャと音を出して激しく揺れる。途中、帽子が飛んでいきそうになり、冷や汗が止まらなくなりましたが、無事到着。ふぅ。川に物を落していないかポケットの中を確認して、先に進んでみる。小さな『恋の鐘』というのがポツンとあった。こういうのは、鳴らしておくに限る。何かいいことありますように!
田野口駅すぐ近くに田野口津島神社があり、ここには『津島神社の五本杉』と呼ばれる御神木があるそう。そこに行きその御神木を目の前にする。ほんとにスッポリ5本だ!? ネットの写真で見るより随分と大きくて勇ましい。すごい! なんで、なんでこうなったの? 不思議でたまらないや!と心が騒ぐ私に対して「うるさい。何も考
えるな。ただ、今のすべてを感じなさい」と言っているかのように、御神木は威風堂々と高台から田野口の町をジッと見守っていた。私も町を眺め、目を閉じる。さすれば、空中では風が楽しそうに行き交い、太陽を浴びた小鳥は木の陰で涼む。再び目を開くとき、私の心は小さな幸せで包まれていた。
すっかり清らかで、なんだか満足気な顔をして、またCB250Rにまたがる。もう少し走れば、私が行きたかった場所のはず。『寸又峡』の看板が出てきた。県道77号・川根寸又峡線に入り奧大井を抜けた辺りからは山の輪郭に合わせてカーブが増えていく。山には2種類あると思う。遠くから見る山と近くから見る山。今CB250Rに乗りながらシールド越しに見ている景色は、いわば山の懐。そこでは姿形の違う木々が、土から一本一本生えていて、風も虫も私も含め多種多様の共存がはたされている。大胆で大規模に見える大自然が、いかに繊細なものなのか…。ああ、しみじみ…、とそんなことを考えながらなんとなくバイクを見る。「んなこと考えてどうすんだ?」とCB250Rはブブブンと最高に気持ちのいい音を奏でながら、私を引っ張っていく。私は考えることをすべて辞め、走りに没頭する。無心で風に斬り込んでいくとき、それは私にとって一番楽しくかけがえのない瞬間だ。
田野口津島神社(五本杉)

『津島神社』のご神木。いったいどうしてこうなったのか。わからないものはわからない。その堂々とした姿にただ圧倒される私
四季の里

お昼ごはんにぶらりと入った『四季の里』。なんとすぐ横でおばさんが本当にソバを打っていました。ということで打ちたてソバいただきます!

川根の茶畑。繊細に育てられた川根の人々の自慢のお茶です

大井川遡上の旅は千頭をすぎると道がものすごく細くなります。旅の相棒CB250Rは頼もしい走りで、そんなせまい峠道も、ビキナーの私を安心して導いてくれます
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水の色は違っても心に残る大切な風景
寸又峡温泉街に到着。ここから『夢の吊り橋』までは、徒歩ルートのみ。20分ほど、自然が豊かな道を歩いていく。途中『天子(てんし)のトンネル』という、冷たい風がピュー、と吹くトンネル。冬ここに吹く冷たい風は『龍神の風』と呼ばれ、この風に当たると無病息災でいられるといい伝えがあるそうです。
長い階段を下り、この辺から少しずつ美しいターコイズブルーをした寸又川が望めるのです。と、思いきや。なんと、2日前に降った大雨の影響で川の水が茶色く濁っていました。あれま〜。 美しい川と素朴な吊り橋がつくる神秘的な風景を見られないのは、残念。でも思えば、鮮や川だって、すべてこの地球のなかの自然現象。地球在住のこの私、いつもお世話になっている地球のことなら全部丸ごと受け入れたい。きっとこれは、旅の鉄則。旅に完璧なんてあり得ない。
あらためて目の前の景色を見る。私は再びこの地にやって来ることができた。「また会えたね」と、つぶやいてみた。早速ルンルン気分で吊り橋を歩き対岸へ。茶色い川の真上に立ち、深呼吸をしながら周りを見渡す。大きな山に囲まれた深い渓谷。水面と陸地の境界線がバッチリ見られる。その境界線から信じられない角度で上に向かって伸びている木々の姿に強い生命力を感じた。すばらしいと思った。美しい大自然にまたも心を打たれてしまった。さらに山奥まで続く川と山の境界線。もっと見たい。もっと知りたい。私はそんな心境になっていた。
夢の吊橋

会いたかった風景と再会できた『夢の吊橋』。水の色は残念だけど、それよりもまたここに来たこと、谷に吹く風を感じられたこと。それだけで充分満足
天狗の落ちない石

夢の吊り橋への入り口付近で見付けた落ちそうで落ちない『天狗の落ちない石』。崖っぷちでkeep! 私、こんな 人生イヤだ
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静かな山あいにあった心やすまる宿の風情
長島ダムから県道388号線に沿
って大井川を5分ほど走ったら、奥大井湖上駅の全体が一望できる『レインボーブリッジ展望台』がある。初めて、ここからの景色を見たとき、エメラルドグリーンがとりまく駅の姿にほれ込んでしまい、この場所はお婆ちゃんになっても絶対忘れたくないと思ったほどです。ずっと見ていたくて、離れたくなかった。でも、あのときは「またね」とつぶやいて帰ったんだった。再びここに来て、何にも変わっていない景色に、私はもう一度ほれた。次はいつ来れるかな。その日まで、またね!
大井川遡上旅、1日めはあっという間だ。私はCB250Rとともに、宿に向かいます。泊まるのは接岨峡温泉駅の近くの『たぶの家』という宿屋さん。宿に着くとやさしそうなご主人が出迎えてくれました。『たぶ』ってなんだろう。と思い聞いてみると「この裏に、こんな山奥で育つのはめずらしい大きなタブの木が生えててね」うれしそうに話す姿が印象的でした。とても趣のある宿で、トロッとした湯の温泉もとても気持ちよくお肌がぷるぷるになりました。
翌朝、宿のご夫妻にごあいさつをして、相棒にまたがる。CB250R、今日も楽しもうね。県道60号線で向かったのは井川大橋。なんと、2トンまでなら車も通れる大きな大きな吊橋。では早速、CB250Rで走ってみる。お。揺れてる! 揺れてる! さすがに空は怖くて見れないですが、川面を見るとバイクと私の影が映ってる。あれ? ここの大井川はなぜか濁ってない。パッと顔を上げると視界には、ちょうど太陽が照り、川はラメが散りばめられたようにキラキラと輝き、山は風の気分に合わせ、サワサワと揺れる。隅々まで細く響き渡る小鳥のさえずり。体をまとう初夏の風。今はここにあるのはこれがすべてだ。しかし、これだけあれば充分。私はずっとこの大自然を感じたかったんだ。
奥大井湖上駅展望所

『奥大井湖上駅展望所』から見える風景。再会したかった奥大井湖上駅の景色に出会えました。なにも変わってない。それがすごくうれしくて、また好きになりました
井川大仏

この地ゆかりの歯科医・佐藤ご夫妻が建立した大仏さま。歯にご利益があるそうなので、お悩みがある方はぜひ
井川大橋

奥大井の風景のなか、井川大橋を飛ぶように滑走する。私が求めた遡上旅の風景がここにあった
たぶの家

たぶの家のご飯はヤマメの串焼、お茶の葉や山椒の葉の天ぷらなど、全部地の物。どれもおいしくて、気がつけばごはん3杯食べてしまいました
滝浪商店


奥大井にあるおでん屋さん滝浪商店。イワシや青のりを細かく刻んだふりかけをかけて食べるそう。ちなみにガツ(豚の胃袋)も! あっさりしているので、ガッツリ、ガツガツ、ガッツけます!!
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トロッコ列車に導かれ忘れられた賑わいの場所へ
下流から上流への旅。私はこの川の流れをたどるなか、一つの駅の名前を教えてもらいました。それは『尾盛駅』で、線路以外に道はなく、全国秘境駅ランキングとやらでは、なんと第2位だとか。ネットの情報によると、ダム工事の関係者のために作られ、建設を終えた現在ではまったく使用されていないらしい。駅員さんも利用者もいない、でも電車は止まるという謎の完全無人駅。どんなところなんだろう? さっそく列車に乗るため、接岨峡温泉駅に来てバイクを停めた「。ちょっとだけ、待っててね」とCB250Rのタンクに手を置き離れた。ホームから見える景色を楽しんでいると、汽笛とともに姿を見せた赤いトロッコ列車。小さくてなんともレトロでかわいらしい。停車すると、車掌さんが降りてきて近くのドアを開けてくれた。へぇ、手動でトビラを開けてくれるんだ。座席に座り、車掌さんに降車駅を伝えてその場で切符を購入。ガタゴトと列車に揺られ、9分程で尾盛駅に到着。
車掌さんがまたトビラを開けてくれ降車。そのとたん、見たくなくても視界に入るあまりにもボロい廃墟が二軒。うわぁ。お化けや心霊などが大嫌いな私。でも、たとえ心臓がビクビクと震え上がっても、頭の隅の好奇心がどんどん足を進めていく。廃墟に近付き、割れた窓やドアのない玄関から、そっとなかをのぞいてみる。壁には麦わら帽子が掛かったままだった。建物の横に回り小窓から覗く。そこは台所らしき間取りの空間。朽ちた食器棚の中にはおせんべいが入ってた懐かしいスチール缶や、小瓶に入ったままの真っ白いお砂糖。こうゆう小物類はある程度きれいなままで残っている。うーん、いまだ残る生々しい生活感はなんなんだ…。ひっそりと、毎日誰かが生活していたりしてね。いやいや、そんなこと、あり得ない、多分ね。
身震いをしながらも、周辺をもっと探索してみる。ところどころにビンや茶碗がたくさん放棄されていた。さらになかに雑草が入り込んで、天然テラリウムが出来ているもの。瓶や茶碗に書かれた柄や書体には、昭和の古きよき時代の名残を強く感じさせられた。サッポロビールにコカ・コーラの文字。相当、盛り上がってたんだろうなぁ。いいなぁ。それにしても、ここで暮らしていた人たちはどこに行ったんだろう。ダムの建設が終わったら、後片付けもせずにすぐにどこかへ帰ったの? わからない…。私の疑問はどんどん深まるばかり。足を止め、辺りを見た。私の足音がなくなると、尾盛駅はとてつもなく静かになり、人の呼吸音すら大きく聞こえた。
静寂のなか、私がただ自由に息をしているだけ。他はすべて時代に取り残され凍っている。もうここでは時間という概念がなくなってしまった空間のように感じた。なんだか、さみしいな…。しかし、この山奥で当時の方々が建設してくれたダムのおかげで、多くの人を困らせた大井川の激しい水害もなくなり、生活に不可欠な水の供給も安定し、水力発電で電力までもを生み出した。すごい。そう考えるとこのさびしげにみえる尾盛駅は、ただ時代に取り残されたわけではなく、先人たちが仲間とともに生きた軌跡を、証明する駅のように思えた。
それまでは大井川を見て、なんて殺風景でだだっ広い川、くらいに思っていましたが、たった一つの流れをたどり、走ってみれば人と自然とのつながりや、水が化けたときの恐ろしさ、ダムの存在意義、実際に作り上げた方々の偉大さ…。そんなことを大井川をとおして知り、また一つ、このニッポンのことを知ることができました。「ポーッ」と汽笛の音が聞こえてきた。もうお終いか…。じゃあ、またね!
遡上旅を終え、旅の汗を流そうと立ち寄った川根温泉。そこで偶然にも、当時の尾盛駅を知るお婆ちゃんに出会った。お婆ちゃんによると「井川線は元々周辺ダムの建設関係者や発電所の作業員の方々が暮らすためのも所の作業員の方々が暮らすためのものでな、病院も小学校もあって、よく栄えていたんよ。3,000〜4,000人くらいは生活していたんじゃないかなぁ」とのこと。お婆ちゃんの話と、今日みた駅の風景が私のなかで交差する。あそこに3,000〜4,000人…。流石にビックリしましたが、確かに相当たくさんの人でにぎわっていたのだろうなぁ。
あのときの「またね」を思い出してよかった。心に残る、色あせない景色。いくらその場所を気に入ったとしても、私の人生で、今後訪れることはもうできないかもしれない。だからこそ、再会をはたしたとき、私は言葉にならない幸福感を感じることが出来たのだろう…。お風呂から出た私はCB250Rの元へ戻り、「おまたせ。帰ろっか」とハンドルをにぎり、再び走り出した。
接岨峡温泉駅

さて、いよいよ今回の最終目的地、全国秘境駅ランキング2位の尾盛駅へ。まずは トロッコ列車に乗り込むために『接岨峡温泉駅』へ。私にしてみたらここも秘境駅でした
尾盛駅

ここに数千もの人が暮らし病院も小学校もあったのは、遠い過去ではない昭和30年代のこと。高度成長期、日本を影から支えた駅は役目を終えて、いまはただただ静かにここにありました。ちなみにここの利用者平均は1日約1人だとか

切符は車内で車掌さんから直接購入。この地域のことをいろいろ教えてくれました

尾盛駅では、タヌキの親子が出迎えてくれました。ポンポコポン

家にカマドに風呂や水道の跡、とにかく、そこらじゅうに生活の痕跡が残されています

まだ居たかったけど『来なかったらどうしよ〜』と思っていたお迎えの列車がちゃんと来てくれました!
※本記事は2019年7月24日発行タンデムスタイルの企画をベースにしています
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