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都会と自然、人々の暮らしと工業地帯の距離が近く、異国文化を柔軟に吸収してきた横浜と川崎には、すぐに出会える身近な美が散りばめられている。
model●たけいみさと report●田宮 徹 photo●柴田直行
※本記事はモーターサイクリスト2024年5月号に掲載されたものを再編集しています。店舗やイベントの情報、商品価格などは当時のものとなります。
今回のスポット
- 横浜ベイブリッジ
- 在日米海軍司令部・統合消防隊第5消防署
- 根岸森林公園
- マリンアンドウォークヨコハマ
- 横浜中華街「市場通り」
- 橫濱媽祖廟(よこはままそびょう)
- ブタまんの江戸清
- 横浜元町ショッピングストリート
- cafe emo. espresso
- MOONEYES Area-1
- 南本牧大橋
- Trex Kawasaki River Cafe
- 川崎工場地帯
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異国風情と美観を狙って
江戸時代末期の1858年に調印された日米修好通商条約により、開港地のひとつとして神奈川が指定された。しかしここにあった神奈川湊は街道沿いの要所であったため、これを避けたい幕府が神奈川の一部と主張して開港したのが横浜。以来この地は異国文化を取り入れながら発展を続けてきた。
横浜中華街は、その代表的存在。1866年にできた外国人居留地がルーツで、中華街としては日本最大規模を誇る。横浜育ちの“ハマっ子”たちに愛されてきた元町の商店街も、横浜開港直後に外国人御用達の店が集まったのが発展のきっかけ。元町を望む山手の高台に、外国人居留地があったのだ。
第二次世界大戦後には、その山手に隣接する本牧や根岸が米軍に接収されて米軍住宅地区に。本牧地区は1982年に返還、根岸地区は2015年に米軍関係居住者が全て退去したが、長きにわたりアメリカとの距離は近かった。
このような歴史的な背景もあり、横浜には異国情緒を感じさせる地域や建物が点在。それらをたどるだけでも“美観を巡る横浜散策ツーリング”は成立する。
例えば前述の横浜中華街はグルメ観光地として超有名だけど、視点を変えれば、中華装飾に彩られた異国空間としても楽しめる。大半の飲食店が開店前で観光客が少ない、午前中の早めに訪れるのがお薦めだ。朝なら猥雑な狭い路地も迷惑を掛けることなく無理なく走り抜けられる。食べ歩きの店舗が開店するのは10時頃から。これで小腹を満たして次の場所へ移動するプランも悪くない。
そんな横浜中華街のすぐ南側に位置するのが元町ショッピングストリート(商店街)。ハマっ子に愛されてきた老舗のウチキパンや洋菓子店の喜久屋、フレンチレストランの霧笛楼などもここにある。メインとなる元町通りは、一方通行の車道に石畳が敷かれ、その両側を花壇で飾られた広い歩道とブティックやカフェなどさまざまなショップが囲む。通り抜けるだけでワクワクするような、ヨーロピアンな風情がいい。
1 横浜ベイブリッジ

横浜のシンボルはたくさんあるけど、そのひとつがベイブリッジ。上層の首都高や下層の国道357号を走れば、みなとみらいや海も眺めることができる
観光地から閑静な住宅地域まで、横浜にはオシャレスポットが点在
2 在日米海軍司令部・統合消防隊第5消防署

通称「第5消防署」。2台の日野自動車製以外に、レトロなボンネット型と角ばったピアース社製のアメリカンな消防車がある。シャッターが開いていることを願いつつ訪ねたい
3 根岸森林公園

都会のイメージが強い横浜だけど、市街地からちょっと足を延ばせば自然も豊富。この時期は、鮮やかな梅の花がお出迎え
4〜6 マリンアンドウォークヨコハマ



SNSなどで話題を集めているのが、赤レンガ倉庫側の入り口にある「天使の羽」の壁画。愛と平和の象徴をテーマに、世界中で活動する米国人アーティストのコレット・ミラー氏が、日本で初めて描き下ろした。施設内にあるクシタニストアと一緒にぜひ!
元町通りをまっすぐ進むと、これまた有名な港の見える丘公園の端に到達。谷戸坂を駆け上がり右折すれば、山手十番館などの洋館が立ち並ぶ美しいエリアが待つ。
この先をひたすら道なりに進むと根岸森林公園。ここも、1969年に返還されるまで米軍に接収されていた場所だ。日本初の本格的な西洋競馬場として1866年に開設された根岸競馬場の跡地でもあり、米国人建築家の設計による旧一等馬見所(スタンド)は近代化産業遺産として現在まで残されている。米軍接収中にゴルフ場として使われた歴史もあり、広大な芝生広場は現在でもまるでゴルフ場のようなアンジュレーション(起伏)。これからの時期は梅や桜がとても美しく、都会にいながら自然を感じられるのも魅力だ。
また、根岸森林公園に隣接する消防署は、実は現在でも米軍施設の一部。運良くシャッターが開いていれば、配備されている米国メーカー製(右ハンドル)のカッコいい消防車を見物できる!
そんな第5消防署以上に、立ち寄ればどっぷりアメリカンな雰囲気に浸れるスポットと言えば、本牧のムーンアイズ。アメ車やハーレーダビッドソンのファンを中心に、広く知られたアメリカンカスタムブランドだ。ショップには、パーツだけでなくTシャツやアクセサリー類などのグッズが盛りだくさん。ガレージや店舗内には鮮やかなカスタムカー&バイクが並び、横にはアメリカンダイナーのムーンカフェも併設され、まさに“ここだけアメリカ”である。
もう少し隠れ家的な場所が好みなら、アメリカンではなくイタリアンなカフェはいかが? ハマを代表する繁華街として知られる伊勢佐木町の裏路地(所在地は末広町)にあるカフェ・エモ・エスプレッソは、超本格的でオシャレなエスプレッソメニューが豊富で、材料からこだわったドルチェやフードも美味。マスターは横浜で育った生粋のハマっ子かつバイク乗りで、現在所有するのは旧型のドゥカティにベスパと、愛車までイタリアンだ。立地は繁華街だけど、目の前に二輪用コインパーキングがあり、ライダーズカフェとしても親しまれている。
ただし、伊勢佐木町そのものは、オシャレな雰囲気には遠い。やっぱり、横浜を代表する美観地区と言えばみなとみらいである。歴史的建造物から生まれた横浜赤レンガ倉庫はあまりにも有名な存在だが、壁に描かれた“天使の羽”がSNSで話題となったお隣のマリンアンドウォークヨコハマは、スタイリッシュで外国の港町を思わせる。ちなみにここには、クシタニパフォーマンスストア横浜も。海沿いのオープンモールなのでこの時期は風が冷たいけれど、メインストリートには大きなヒーターが設置されているから有り難い。
開国の舞台となった横浜には、エキゾチックな雰囲気が凝縮
7 横浜中華街「市場通り」

日中は歩行者専用となる道も多く、そうでなくても人が多い横浜中華街は、走り抜けるなら午前中に。春節(旧正月)を迎える2月は特に華やか
8 橫濱媽祖廟(よこはままそびょう)

中華街の廟(神を祭る場所)は中国道教建築の粋。明治時代から続く関帝廟(かんていびょう)とともに、その鮮やかさには目を奪われる
9 ブタまんの江戸清

近年人気の食べ歩き“デカグルメ”と言えば大鶏排(ダージーパイ=台湾から揚げ)だけど、この日は久しぶりに定番の巨大ブタまんを
10 横浜元町ショッピングストリート

緩やかにカーブする石畳の道は、両側を花壇で彩られていて、どこか欧風の雰囲気。やっぱり元町は“ハマ”のおしゃれ街!
ハマのライダーに愛され続ける、小粋な“イタリア”と往年の“アメリカ”
11 cafe emo. espresso


バイク乗りのマスターが営むイタリアンカフェは、スッと立ち寄り小粋にエスプレッソを飲むのにちょうどいい。あ、でもやっぱりドルチェも……
12 MOONEYES Area-1



王道の米国カスタムカルチャーを表現したアイテムで溢れるショップは、テーマパークのよう。隣接のムーンカフェもアメリカン
さて、これまでに挙げたスポットを巡るだけでも一日はあっという間に終わってしまうが、それだと“移動”ばかりで、ツーリングとしてはもの足りない。本牧辺りの港湾エリアを流すだけでも悪くないが、せっかくならもう少し距離を延ばし、横浜のシンボルになっているベイブリッジを渡って、夕方に川崎の工場地帯を目指したい。理由は一つ、日没後の浮島町や千鳥町などは、“産業が生み出すイルミネーション”の工場夜景で彩られるから。確かにこの時期の夕暮れ以降はかなり寒いが、間近で眺める工場夜景は非日常的でもあり、美観を巡る都市ツーリングの〆としては最強だ。
巨大な工業地帯に隠された、すぐそばの非日常とオアシスへ
13 南本牧大橋

ふ頭にそびえ立つ巨大なコンテナ用クレーンを眺めながら、運河を渡る。特別なわけではないけど、どこか心地いい風景に会える
14 Trex Kawasaki River Cafe

都会的だけど、アクティブライフスタイル&カルチャーに対する理解度も深いカフェは、ライダーにも優しい。工場地帯が夜の顔になるまでひと休み
15 川崎工場地帯

敷地内の誤進入に気をつけながら自分好みの明かりを見つけるのが、工場夜景巡りの楽しさ。メタリックなライトアップに大興奮!


浮島町や千鳥町の工場夜景を狙うなら、日没前の時間調整や帰宅前の休憩などに、隣の殿町にあるトレックスカワサキリバーカフェを活用するのがお薦め。あまり知られてはいないが、ホテルに併設されたとてもオシャレな空間なのに、テラス席のすぐ横に愛車を止めてドリンクやフードを楽しむこともできるのだ。店舗内観もかなりスタイリッシュで居心地がいい。
横浜は坂の街で、海沿いから少し内陸に向かうだけで、急坂が待ち構えることも少なくない。しかも狭い道が多く、だからこそ散策にはバイクの機動力が生きる。川崎の工場地帯は公共交通機関で巡るのが不便で、工場夜景を眺める際は路肩に駐車することになるので、バイクが便利。「横浜や川崎をツーリングなんて……」と思うかもしれないが、バイクだからこそ出会える横浜や川崎もあるのだ。まだ遠出するには寒いこの時期こそ、ぜひお薦めしたい!
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